童心失せぬ

多趣味女の好きなもの詰め

ぎょらん/ネタバレ感想

亡くした人の残した願いを叶えてあげられた瞬間だけは、再び繋がれる

人が死ぬ際に残す珠「ぎょらん」。それを嚙み潰せば、死者の最期の願いがわかるのだという。地方都市の葬儀会社へ勤める元引きこもり青年・朱鷺は、ある理由から都市伝説めいたこの珠の真相を調べ続けていた。「ぎょらん」をきっかけに交わり始める様々な生。死者への後悔を抱えた彼らに珠は何を告げるのか。
傷ついた魂の再生を圧倒的筆力で描く7編の連作集

久々に町田そのこ作品を読んだけど、ま~~~あこの作者の描く〝不幸な人〟があまりに不幸すぎて、良くこんな不幸を思いついて、書くことが出来るなとビックリする。。自分が少しでもメンタル弱い時に読むと更に持っていかれる。でも元気な時に読んでも落ち込む。読むタイミングが難しいぜ。

 

今回、死がテーマになっている。その中で、残された立場として共感出来た表現がある。

〝私はこの人のいた世界からすっぱりと切り離されてしまった。「死」を前にして残された人が出来るのは、想像することだけ〟

わたし自身、弟を亡くして、その死と向き合い続けている。母は仏壇にお供え物をしたり、毎日お墓参りに行ったりして、未だに弟のために出来る事をしている。でもわたしはそれを見て、弟のためにやっているのであれば、意味がないのになあと少し思ってしまっている部分がある。薄情だなと自分でも思う、でももう弟はこの世にいないし、きっと見守ってもくれていない。そのぐるぐるとした気持ちを表現するのであれば、別の世界に行ってしまった、なんだなと思った。だからと言って、そういう行動を否定する訳では全くもってない。そうすることで、死者と繋がっている気がして、こちらが救われるならそれでいい。

 

タイトルになっているぎょらん。死者が自分の想いを遺すいくらのようなもので、噛み潰すとそれが伝わってくるというものだったが、安易に見つかったり食べたりせずに話が進んでいくことがとても良かったし、最終的にも、ぎょらんを食べて救われる訳ではないのが、読者に優しいなと思った。大事な人を亡くして前を向けない人はきっとたくさんいて、その人達はぎょらんを食べれる訳ではない。でも、自分の被害妄想で苦しんでるのではないか、本当に亡くなったあの人は自分を憎んで死んでいくような人なのか、と、前を向くきっかけをくれる終わり方だと感じた。夢を見せる訳でもないが、それがすごくわたしには沁みた。

 

〝大事な人はいなくなっても、その人を知っている人、その人の記憶を繋いでいる人がいるんです。遠回りになるかもしれないけど、巡り巡っていけば亡くなった人に辿り着けるものなのだ〟

亡くなってもまだ大切な人の事を知ることは出来る。そして、その記憶を大事に繋ぐことだって出来る。悲しい話が多いけど、少し希望を持てる本だった。遺された人たち、どうかみんな幸せに。