童心失せぬ

多趣味女の好きなもの詰め

オットーという男/ネタバレ感想

果たして亡くなった妻のコートをしまう必要があったのかって話をしたい。

 

オットーは町内イチの嫌われ者でいつもご機嫌斜め。曲がったことが大っ嫌いで、近所を毎日パトロール、ルールを守らない人には説教三昧、挨拶をされても仏頂面、野良猫には八つ当たり、なんとも面倒で近寄りがたい・・・。それが《オットーという男》。 そんな彼が人知れず抱えていた孤独。最愛の妻に先立たれ、仕事もなくした彼は、自らの人生にピリオドを打とうとする。しかし、向かいの家に越してきた家族に邪魔され、死にたくても死ねない。それも一度じゃなく二度、三度も・・・。世間知らずだが、陽気で人懐っこく、お節介な奥さんマリソルは、オットーとは真逆な性格。小さい娘たちの子守や苦手な運転をオットーに平気で頼んでくる。この迷惑一家の出現により “自ら人生をあきらめようとしていた男”の人生は一変していく――。

 

妻との人生がとても幸せだった。故に、妻が亡くなったら世界がモノクロに見える。もう生きる意味がない。と自殺を図るオットー。つらい、心の底から奥さんを愛していたからこその孤独で、何度も涙が出てきた。つらい。結局、そのつらさを乗り越えるのに必要だったのは、新たな繋がりを作ること。わかる、それはわかる。でも、大事に取っておいた妻の私物を箱にしまう必要はあるのか、ないのかって疑問。

もちろん人それぞれだと思うけれど、わたしはそのままでも良かったんじゃないかな、と思う。妻のコートを見てたまに寂しくなる日があってもいいじゃない、自分の人生の大きな部分がぽっかり穴が開いちゃっても、そこに新しいものを詰め込まなくなっていいじゃない、別の部分に新しい大切な場所をしまえばいいじゃない。と思う。でも先ほども言った通り人それぞれだから、マリソルは私物はしまうべきだと思ったし、オットーもそれに納得して行動に移して、結果自殺をやめたんだから良かったよね。

自分だったらどうするかな、と思う。多分私物はそのままにして、何日かに一度それを抱きしめて泣いたりするのかな。でも意外と人って前を向いて生きていけるものだから、そんなに長い間うじうじしている訳でもないかな。そもそもそんな何十年後にも、愛しいって気持ちは続いているんだろうか。そう思うと、オットーは本当に、長い間ずっとずっと愛していたんだなあと余計にジーンとする。

逆にわたしが先に眠りについたらどうだろう。考えるだけでも胸が痛くなるな、健康に気を付けて長生きしよう。

 

マリソルはもちろんだけど、娘二人がとてもかわいかった。好きなシーンは、昔奥さんと二人で行っていたカフェに、オットーがマリソルと一緒に行くところ。人と繋がることで少しずつ前を向けるんだな、と思わせてくれるシーン。年齢や性別、価値観が違っても凍てついた氷を解かすことが出来るんだ。

 

あらすじ読んだだけで、「絶対良い映画!」と思わせれる設定。ずるい。見て、案の定面白い。前向きな気持ちになれるので、大切な人と一緒に見るのにぴったりな一本。